2017年02月12日

ディナーショー


 五十五歳の誕生日を迎えて驚いたのは、社員が用意してくれたプレゼント「遠山正道のディナーショー」の開催である。昨年の誕生日に「いつもサプライズ大変だから、来年はおれがパーティーやるよ」なんて言ったものの何も動かない私に対して、結局周りが段取りしてくれたという訳で。

 さてそんなことで、どう内容を作るか。たまに行く生バンドカラオケでのヒョウキンな唄と踊りは一定のウケは予想は出来るが、それでいいのだろうか。ディナーショーと呼べるか。しかし唄など全然得意ではない私の唄を聞かされるのも酷、なので、三曲歌ってみることを想定した。

 そして!

 なんと、この度、はじめてボイトレ、つまりボイストレーニング、つまり簡単に言うとカラオケ教室の門を叩いたのだ!そして、こんなに恥ずかしいことを!マーク付きで露呈しているのは、なかなかこのボイトレなるもの、面白いし皆さんにもオススメだなと思った次第で。

 私は渋谷の、何だか若者が集まるファンシーな教室な気もして気が乗らない点はあったものの、先ずマンツーマンで部屋に入ると、十五分は柔軟体操から始まる。身体や頭の中の響く部分を拡げて、大晦日の鐘が響くように、身体自身の力を抜いてリラックスし身体で唄を響かせるために欠かせないことのようで。もうその辺りから本格派である。想定外の柔軟体操。そして、例の、発生練習である。あ、とか、お、とかで、やっていく、あれ(うまく文章で書けないが多分皆さんが今思い浮かべているそれ)。あー、とか、おー、とかそれぞれ口が縦に開くとか声帯が開くとか色々理由があるようで。そして、皆さんが昔から憧れていた、あの腹式呼吸の順番がやってきた。肺で呼吸をすると容量に限界があり肩が上がって声帯に負担をあたえ身体も鳴らなくなるのでお腹に風船がぷーっと膨らんでいるように下っぱらに息を思い切り貯めてそれを前や横から押さえるのではなく風船の上から中の空気を押し出すように、そして口から前に、口から羊羹がにょきーーーーーーっと前に伸びていくように最後の最後まで吐ききって、そこからまた吐ききれ!!もういっちょうはいて!!、はいすって!!鼻からお腹に!ぐーっっとパンパンに吸って、止めて!!

 いやー、勉強になります。

 五十五年生きてきましたが、知らない事は沢山ある。
 皆さんには悪いが、私、風船を上から押し出す感じや、羊羹口からにょーーっ(にょーは口が縦に開く)と出したり、声を前に前にとか、、ちょっと分かる気がする。あの虎屋の黒川さまだって、口から羊羹だす感じは掴めていまい。

 無謀に選んでしまったフランクシナトラのニューヨーク・ニューヨークが、今から怖いのである。

(「味の手帖」2017年3月号原稿より転載) 



Smiles: at 14:13│clip!